直系家族の扶養義務は民法877条に規定されており、特段の事情がない限りは自分の直系家族を扶養するのが一般的です。しかし、扶養となると自分自身の金銭的な負担が増えることから扶養したくないと考える人もいます。扶養をどうするか考える際に、扶養家族がいると受けられる控除など、意外なメリットとそのポイントについてご紹介します。
目次
健康保険における、親を扶養するメリットとは
会社員が親を扶養すると世帯の支払い総額が減る
親が子の扶養に入る場合、親は年金以外の収入がない、またはあっても基準額以下であることがまず条件となります。扶養を受ける前の親は国民健康保険に加入していると想定されますが、国民健康保険は、扶養の概念がなく、一人ひとりに加算されます。一方、社会保険は、給与が同じであれば扶養家族の人数に関わらず、一律の保険料負担となりますので、結果世帯全体の支払い額は押さえられます。
親の年金受取額や、親のアルバイト収入額によっては自立と判断
健康保険の扶養に入れられるかどうかの判断は、親の収入状況によります。もし親の収入が年金のみであれば、65歳未満で108万円以下、65歳以上で158万円以下の収入の場合、扶養に入れます。親がアルバイトなどの副収入がある場合は年金との合算になります。このため、ギリギリの金額の人については、アルバイトをせず、扶養控除額で差異を埋めるというのもひとつの選択肢といえます。
生計を共にしていることが必須条件
先ほどの収入条件に加え、扶養者と被扶養者が生計を共にしている必要があります。とはいっても生計を共にするための負担金額がいくらであるかの定めはありません。例えば、子が建てた家に住んでいるものの、親の生活費として補助をしている額が数万円程度であったとしても、それが継続的に続くことが予測される場合は生計を共にしているとみなされます。
健康保険について扶養に入れると、医療費控除もまとめられる
一年間の医療費が所定額以上であれば、一部控除の対象として還付申告が可能な「医療費控除」ですが、本人だけでなく扶養家族の分もまとめることができます。親世代は比較的医療費もかさみやすい傾向にあり、本人はそれほど医療費をかけていなくても、還付金が発生することもあるので、申告時期までに領収書などを捨てないことが大切です。
親を扶養するときの税金控除とは?
扶養者の所得税額について控除が発生
扶養をする子の所得税額は前年の各種控除額を引いた金額が基準となります。そのため、親を扶養すると扶養控除額が大きくなり、翌年の税金が抑えられることになります。また、家族の扶養人数に関しては、12月31日時点での扶養状況について判断しますので、12月に扶養に入ると、加入初年度は扶養負担額などを加味した金額が効率よく控除されます。
親の年齢次第では控除額がさらに大きくなる
親が70歳以下の場合、扶養者の実子などと同様の扶養控除となりますが、70歳以上の場合はさらに老人扶養控除となり、控除額が大きくなります。これにはもちろん、70歳以上になると通院や介護の可能性も高まり、より多くの負担額が上がることを想定した金額となりますが、比較的健康な親を扶養している場合は、子の負担が軽くなるのでメリットが大きいといえるでしょう。
扶養家族は同居していなくてもよいって本当?
扶養家族は同居していなくても扶養可能
扶養家族の要件は、先ほどの「生計を共にしているかどうか」が優先され、別居していても扶養可能なケースは十分にあります。例えば、親と子の居住区が違う場合や親が老人ホームにいる場合は別居していますが、仕送りなどの事実が確認できる場合、扶養家族とすることができます。
別居している配偶者の両親を扶養することはできない
配偶者がすでに自分の扶養に入っており、配偶者の実家にいる親の扶養についてはどうでしょうか。原則、血縁のない被扶養者(配偶者)の家族は生計を共にしている場合のみ扶養可能です。そのため、配偶者の家族が一緒に住んでいる場合は扶養できる可能性が高く、逆に配偶者の親が別居している場合は、扶養家族として迎えることができません。
まとめ
扶養家族の範囲はそれぞれの条件に合わせて変わり、同じ人間関係であっても同居や年齢に応じて控除の可否や控除額に違いが発生します。もちろん扶養をするためにはさまざまな費用負担も発生しますので一概にメリットが多いとは言えません。とはいえ、別居で不安な生活を送るようであれば、各種控除に限らずお互いにメリットのある方法を策定してみることをおすすめします。