平成27年4月1日に、贈与税の税率が改正され、最高税率が55%に引き上げられました。一方で、父母・祖父母から20歳以上の者に贈与する場合の税率は、引き下げをされています。これらの贈与税の税率を知っていれば、財産管理に役立てることも可能になります。贈与税の仕組みと、税率がどのようになっているのか、みていきましょう。
目次
贈与税の計算の仕方
贈与を受けた額とは
贈与税を計算するためには、贈与された額を確定させる必要があります。一定の適用要件を満たせば、相続時に精算する「相続時精算課税」を選択できますが、それ以外の場合1年毎に課税され、区切りは、1月1日から12月31日までとなっています。そこで、1月1日から12月31日までの1年間に、贈与を受けたすべての額を合算します。例えば、1月1日に祖父から100万円、同じ年の12月31日に祖母から50万円の贈与をうけた場合、その年贈与を受けた額は150万円となります。
税額計算の仕方
1年間に贈与を受けた合計額がわかったら、いくら贈与税がかかるか計算をします。贈与税には、税金のかからない基礎控除額が110万円認められています。そこでまず、1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除の110万円分を差し引いた額を計算します。もし、1年間に贈与された合計額が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要です。
先ほどの例ですと、
(祖父からの100万円+祖母からの50万円)−(基礎控除110万円)=40万円
となり、40万円に対して、贈与税が課税されます。
複数人から贈与を受けた場合の、基礎控除額
贈与してくれた人それぞれに、基礎控除枠が使えると勘違いし、祖父100万円-基礎控除110万円=-10万円、祖母50万円-基礎控除110万円=-60万円と考え、どちらも基礎控除110万円以下なので、贈与税がかからないと考える人がいますが、それは間違いです。基礎控除110万円が使えるのは、1年間の合計贈与額に対してとなります。
一般贈与財産に対する贈与税
2つの税率
「贈与を受けた財産の合計額−基礎控除額」という計算式から、課税される価格がわかったら贈与税の税率を用いて計算します。若い世代への資産移転を促すため、父母・祖父母から20歳以上の子や孫に贈与する場合、特例贈与財産用の特例税率が適応されます。それ以外の場合、一般税率での計算となります。一般税率で計算されるのは、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合、兄弟間の贈与、叔父から甥への贈与など、様々な場合が考えられます。
一般贈与財産用の一般税率 (〜1,500万円)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
一般贈与財産用の一般税率 (1,500万円〜)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
一般贈与財産に対する税率は、上記のようになっています。例えば、500万円の贈与を受けた場合、基礎控除110万円を引いた390万円に対する税率は20%、控除額は25万円となります。したがって、390万円×20%−25万円=53万円が贈与税額となります。
特例贈与財産用の特例税率による税額
特例贈与財産用の特例税率が認められる場合とは
祖父母や父母などから、その年の1月1日において20歳以上の子や孫への贈与を行う場合、300万円より多い額ならば優遇された税率で贈与税を納めることができます。これは、相続を待たず若年世代へ資産移転がスムーズに行われることをひとつの目的とした制度で、祖父から孫への贈与、父から子への贈与など直系血属に対し適用されます。そのため、A男さんの妻であるB子さんが、A男の父から贈与を受ける場合には、適用することができません。
特例贈与財産用の特例税率(〜3,000万円以下)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
特例贈与財産用の特例税率(3,000万円〜)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特例贈与財産に対する特例税率は、上記のようになっています。例えば、父から成人した子どもに500万円の贈与を受けた場合、基礎控除110万円を引いた390万円に対する税率は15%、控除額は10万円となります。したがって、390万円×15%−10万円=48.5万円が贈与税額となります。
まとめ
平成27年1月の贈与税率改正前は、贈与税の最高税率は50%でしたが、改正後は55%にアップしました。その一方、父母・祖父母から20歳以上の者に贈与する場合の税率は、以前より引き下げられています。また、1年間の基礎控除額110万円を上手に活用すれば、課税額が異なってきます。贈与額に対する贈与税率とともに、誰からいつ贈与すれば良いか、よく検討して贈与を行ってください。