前年に所得があった人に対し、個人の所得に合わせて課税される「住民税」。毎年額に変化がある人もいるのが特徴です。自分の住む都道府県や市町村へ納めることで地方の財源となり、地方活性に役立つ「住民税」の計算方法についてご紹介します。なお、住民税には個人住民税と法人住民税の2種類がありますが、今回は個人住民税に注目します。
目次
住民税の計算方法を知る前に「住民税」について知ろう
住民税は前年の所得に応じて算出され、納付する
住民税は前年の所得に応じて課税されます。所得は算定期間(1月1日〜12月31日)の期末に確定するというのが前提ですので、所得税は確定後決められた期日に、住民税は原則一括または年4回に分けて期末に住所のあった自治体へ納税します。日本では給与所得者が多いため、住民税は企業が従業員に代わり徴収、納税する「特別徴収」を行うケースが大半です。また、一定の要件下において企業は「特別徴収義務者」となり、代理徴収することが定められていることも「特別徴収」が多い理由の一つです。
住民税には「市町村税」と「都道府県税」がある
住民税には「市町村税」と「都道府県税」という区分があります。期末に住居のあった都道府県または市町村へそれぞれ納付しますが、基本的に納税者はまとめて納付します。このときに基本となる税率ですが地域格差がないよう、原則都道府県税は課税対象所得の4%、市町村税は6%と定められています(標準税率)。後述しますが、この標準税率を適用していない市町村もありますので、転勤・異動した際、経理担当者はとくに気をつけたいポイントです。
住民税には「均等割」と「所得割」がある
住民税には均等割と所得割という区分もあります。上記の「期末に住居があった自治体へ納税」が住民税の原則で、基本的には均等割と所得割を合算したものを住民税として納付します。なお、均等割については、期末に任意の自治体へ事業所や別荘があった人も支払う必要があります。ですので「A市に住んでいるもののB市で事業を営んでいる個人」に対しては「A市の均等割+所得割」とB市の「均等割」がそれぞれ課税されます。(法人の時は法人住民税が適用されます)
実際の住民税の算出方法について
住民税を算出するときの基本
基本的な住民税の額は「前年の収入−前年の必要経費・各種控除(給与所得控除)=課税対象所得」に所得割(都道府県4%、市区町村6%)をかけた金額と均等割 都道府県1,500円、市区町村3,500円の総和で決定します。※均等割は平成35年まで復興支援目的で500円ずつ上乗せになっています。あくまで前年の総収入ではなく各種控除を差し引いた額に対して税金が算出されることに注目しましょう。
住民税がかからない場合とは?(1)控除により非課税となる場合
各種控除のうち、「基礎控除」と「給与所得控除」というものを適用すると、非課税になる場合があります。まず基礎控除は日本に住む人が最低限の生活を営むのに必要な収入への控除とされ、個人事業、給与所得を問わず、収入から一律で控除されます。また、個人の費用に対し経費計上のできない給与所得者に対しては、その所得に応じて「給与所得控除」が適用されます。この総和により、年収103万円以下の給与所得者に対しては非課税となります。
住民税がかからない場合とは?(2)非課税対象者の場合
住民税は一定の条件下において非課税となります。
1)生活保護受給者
2)未成年者、障がい者、寡婦、寡夫で、前年の合計所得金額が125万円以下の者(ただし、給与所得者は204万4,000円未満)
3)前年の合計所得金額が、各自治体の定める額以下である
また、上記の3)に該当する人の金額によっては「所得割」分が免除になるケースと「所得割」「均等割」両方が免除になるケースがありますので注意しましょう。
住民税は全国一律ではない?
地域間で住民税が違う理由とは?
今まで住民税は「市町村税4%+都道府県税6%=所得の10%」というのが基本とお話してきましたが、このときに算定の基準となる「標準税率」を使用するかどうかはその自治体に委ねられています。具体的に財源上の問題でその自治体が税率を上げたり、逆に地域に還元する目的で税率の低い都市があります。実際に例をあげると、2016年の神奈川県では水源環境の保全などを目的として、県民税について所得割は「課税所得金額の4.025%」、均等割は「年額1,800円」と定めています。
住民税の安い都市、高い都市の違いとは?
住民税を上げる都市には「北海道夕張市」のような財政破綻団体とし、再建をするために一時的に税率を変えた都市や、愛知県のように所得割の税率を下げる代わりに均等割を500円上乗せし、愛知に関係する人全体から少しずつ徴収するよう制度を変えた都市もあります。また、沖縄県金弐町は全体的に税率を抑え、町民に還元しています。今はほとんどの都市で標準税率を使用していますが、今後は様々な都市で財源確保のために税率を変更することが予測されます。
まとめ
住民税は元となる所得からそれぞれの条件により控除などを伴うため、様々なケースを想定して試算・計算することが大切です。また、前年の収入が基礎となりますので正確な金額は確定申告後に決定します。年度の途中で試算をする場合は、所得・控除額の確定後確認することを忘れないことが大切です。