私達が毎月支払う電気料金の中に「燃料費調整額」が含まれていることをご存じでしょうか。今回はこの「燃料費調整額」がどのような仕組みで毎月の電気代にどのように関わってくるのか、詳しくご説明します。
燃料費調整制度とは
燃料費調整制度は、原油など火力燃料の輸入価格の変動に応じ、毎月電気やガスの料金を調整する制度のことです。経済情勢の変化に即した料金調整を行うため、1996年より導入されました。当初の制度では年に4回の燃料費調整が行われていましたが、市場環境の急激な変化を受けて2009年には制度の見直しが行われ、燃料費の価格変動を毎月反映させるという仕組みに変更されました。
この燃料価格の変動を即座に電気料金に反映させたものが、毎月の電気料金に含まれている「燃料費調整額」になります。電力会社が電気を作るためには原油や石炭などの火力燃料が必要です。それらの購入にかかった毎月の燃料費の変動に応じて、私達の支払う電気料金も上がったり下がったりする、というわけです。
燃料費調整額はどのように決められているの?
火力燃料(原油・液化天然ガス・石炭)それぞれの3ヵ月間の貿易統計価格に基づいて毎月「平均燃料価格」を算定します。この平均燃料価格(実際の燃料価格)と基準燃料価格(想定していた燃料価格)を比較して「燃料費調整単価」を算定し、2ヵ月後の電気料金に反映させる仕組みになっています。例えば1〜3月の貿易統計価格に基づいて算定された燃料費調整単価は、6月分の電気料金に反映されることになります。
燃料価格が想定していた価格より高かった場合、つまり平均燃料価格が基準燃料価格を上回る場合はその差分の量だけプラス調整を行います。反対に、燃料価格が想定していた価格より安かった場合、つまり平均燃料価格が基準燃料価格を下回る場合はその差分の量だけマイナス調整を行います。平均燃料価格が基準燃料価格と同じだった場合は、燃料費の調整は行いません。
平均燃料価格や基準燃料価格は電力の供給エリアによって異なるため、それらの値によって算出された燃料費調整単価もお住まいの地域によって変わってきます。こうして決まった燃料費調整単価にご家庭の1ヵ月の電気使用量(kWh)をかけた値が毎月の「燃料費調整額」となります。計算式は以下の通りです。
燃料費調整額(円)=燃料費調整単価(円)×電気使用量(kWh)
燃料費調整額は毎月の電気代にどう関わってくるの?
私達が毎月支払っている電気料金には、大きく分けて3つの種類があります。契約電力の大きさで決まる「基本料金」と、使用電力量に応じた「電力量料金」、そして「再生可能エネルギー発電促進賦課金」です。なお、「電力量料金」は以下の計算式のように、燃料価格の変動に応じて燃料費調整額を加減して算出されます。
電力量料金(円)=1kWhあたりの料金単価(円)×電気使用量(kWh)±燃料費調整額(円)
燃料価格が上がった場合は燃料費調整額が加算されるので、その分だけ電力量料金が高くなります。一方、燃料価格が下がった場合は燃料費調整額が差し引かれるので、その分だけ電力量料金が安くなります。前述の通り燃料費調整額は「燃料費調整単価(円)×電気使用量(kWh)」ですから、電気を使えば使うほど燃料費調整額の値も増減していくことになります。
このように私達の支払う電気料金は燃料費調整制度の下で自動的に調整が行われていますが、それでは市場での燃料価格が大幅に上昇した場合、私達もそれに応じてたくさんの燃料費調整額を支払わなければならないのでしょうか?
実は、その必要はありません。なぜなら、貿易統計価格に基づき算出される平均燃料価格には一定の上限(基準燃料価格の+50%まで)が設けられていて、その価格を上回る分の金額は燃料費調整単価に反映されないようになっているからです。このような仕組みによって、私達は燃料価格が高騰した時でも安心して電気を使うことができるようになっています。ちなみに、平均燃料価格の下限値は設定されていません。
まとめ
燃料費調整額は燃料価格の変動だけではなく、電力会社が使用する燃料の量が増減した場合など電力会社の経営状況によっても変動していきます。電気料金の仕組みをしっかりと理解し、今後、電力の購入先を選ぶ際には燃料費調整額の扱いがどうなっているのかにも注目していきたいところです。