2016年2月に始まったマイナス金利政策。これは「余裕資金を日本銀行に預けても金利を取られるので民間への融資に回してください」という日本銀行から各金融機関へのメッセージです。マイナス金利導入後、住宅ローン市場では金利の引き下げ競争が激しくなっています。ここではマイナス金利時代の住宅ローンの動向についてご説明します。
目次
マイナス金利導入後、金融機関は住宅ローンの金利引き下げ競争へ
金融機関は個人向け住宅ローンへ向かう
マイナス金利導入の背景には、「金融機関が企業向け融資を増やす」→「企業が儲かる」→「景気好転、デフレ脱却」というシナリオがありました。ところが、銀行などの金融機関にとって、景気に左右されやすい企業向け融資は比較的リスクが高い融資です。一方、不動産担保付きの住宅ローンは低リスク融資の代表格。よって、多くの金融機関が住宅ローンに力を入れています。
新規住宅取得の低迷、借り換え需要中心の住宅ローン市場
さて、マイナス金利導入後は住宅ローン金利が下がり、住宅ローンの借り換え申し込みが殺到しました。一方で、新規の住宅取得向けの住宅ローン需要は振るいません。新規住宅取得の低迷の背景には、不動産価格の上昇や賃金の低迷があると見られています。新規住宅取得需要が振るわないとなると、金融機関は住宅ローンの借り換え客を奪い合うことになります。
借り換え客狙いの住宅ローンの金利引き下げ競争
2016年7月には、りそな銀行が「りそな借りかえローン(WEB申し込み限定プラン):変動金利型年0.569%、当初10年固定金利型年0.400%」を、三井住友信託銀行が借り換え客向けに「当初期間金利引き下げ型住宅ローン5年固定年0.35%、10年固定年0.40%、変動金利型住宅ローン年0.60%」を投入。借り換え客狙いの金利引き下げ競争が激化しています。
金利引き下げ競争の主戦場は「10年固定金利特約型住宅ローン」
「10年固定金特約型住宅ローン」とは
「10年固定金利特約型住宅ローン」とは、「最初の10年は金利が年X.XX%で固定」という特約がついた変動金利型の住宅ローンです。10年を過ぎると変動金利型になるタイプ、あるいは「○年固定金利特約型」か変動金利型を選択できるタイプがあります。最初の固定金利期間は2年〜10年が一般的ですが、金利引き下げ競争のメインは「10年固定金利特約型」です。
最初の10年が過ぎたらどうなるか
上述の「りそな借りかえローン:当初10年固定金利型年0.400%」の場合、「当初10年の金利は、店頭表示金利年2.900%−最大2.5%引き下げ=年0.40%、10年経過後はその時の店頭表示金利−最大1.906%引き下げ」としています。10年後にまた10年固定金利にする場合、10年後の店頭表示金利も同じ年2.900%だとすると、11年目から金利は年0.994%になります。
「10年固定金利特約型住宅ローン」はどんな人向けか
ほとんどの金融機関では最初の固定金利期間の金利引き下げ幅を大きくしているため、固定金利期間経過後は金利が上がります。よって、「10年固定金利特約型住宅ローン」は、10年くらいでローンを返済できる人、または繰り上げ返済などで10年後にはローン残高を大きく減らせる人に向いています。
10年後に別の住宅ローンに借り換える作戦もある
今後も金利が大きく上昇する可能性が低いと考えるなら、金利固定期間が終わる10年後に低金利キャンペーン中の別の住宅ローンに借り換えるのも選択肢になります。ただし、10年後の自分の経済状態や健康状態によっては、住宅ローン借り換えの審査に通らないリスクがあることは心にとめておきましょう。
10年固定金利特約型」以外の住宅ローンはどうか?
その1: 全期間固定金利型住宅ローン
借り入れから返済終了まで金利が決まっており、返済額がずっと同じ住宅ローンです。低金利時に借りるとずっと低金利で返済し続けることができます。「フラット35」はこのタイプの住宅ローンの代表例。「フラット35」やほかの全期間固定金利型住宅ローンの金利も金融機関によっては年1%を切るレベルまで下がっています。長期の返済期間を希望するなら全期間固定金利型住宅ローンはよい選択肢です。
その2: 変動金利型住宅ローン
ほとんどの変動金利型住宅ローンは半年ごとに金利が見直され、返済額が変わってきます。金利上昇局面では返済額が高くなり、金利低下局面では返済額が低くなります。借り入れ時の金利は、「全期間固定金利型」や「○年固定金利特約型」よりも低いのが一般的です。これ以上の金利低下が難しく今後金利上昇に向かう可能性が高いこと考えると、今は変動金利型を選ぶ時期ではないと思われます。
その3: 超長期の○年固定金利特約型住宅ローン
金融機関によっては20年、30年といった超長期の固定金利特約型住宅ローンがあります。「30年固定金利特約型住宅ローン」ともなると、実質的には「全期間固定金利型」とほぼ同じと考えていいでしょう。また、金融機関によっては年1%を切る金利の超長期固定金利特約型住宅ローンも登場しており、長期の返済期間を希望する場合は「全期間固定金利型」と同様によい選択肢といえます。
まとめ
いかがでしたか?住宅ローン市場の動向と、金利面での住宅ローンの選択肢を見てきました。ただし、実際に住宅ローンを選ぶ際には、金利以外にも、保証料、事務手数料、団体信用生命保険料、不動産登記費用などの初期費用をチェックする必要があります。金融機関によっては「保証料無料、団体信用生命保険料無料」というケースもあるため、じっくり比較検討することが大切です。