日本では、火力発電に次いで、水力発電がエネルギー源となっています。水力発電によるエネルギー量は、2015年時点において全体の8%程度。これは、風力や太陽光などを含めた自然エネルギーの中で高い数値です。それでは水力発電とはどのようなものなのか?今回は、しくみや現状などを解説します。
目次
水力発電におけるしくみや種類とは
水力発電は水を利用した発電
山間部に行ってダムを目にしたことも少なくないでしょう。実はこのダムは、水力発電の設備として使用されているものです。水力発電では、ダムなどの設備で、水を高い位置から低い位置へ流すことによって、水車を回し、運動エネルギーを生み出すことで、電力として使用できるようにしています。ダム以外にも、水路やダムと水路を併用した構造のものもあります。
水力発電の種類‐川の流れをそのまま利用する方法
水力発電のひとつにあげられるのが、流れ込み方式です。こちらの方式では、川の流れをそのままエネルギーとして利用するため、川をせき止めるダムの建設は行いません。しかし、人工的に流水を行わないために、運動エネルギーがどうしても小さくなってしまう発電方法となります。規模の小さい発電所で取り入れられている方式です。
水力発電の種類‐ダムでせき止める方法
ダムで水をせき止めることで、発電を行う方法には、「調整池式」と「貯水池式」の2つの方法があります。どちらも、ダムと下の川の落差を利用して発電を行いますが、調整池式の方が、規模が小さいのが特徴です。そのため、1日や数日単位での調整に向いています。一方、貯水池式は、水量が多く電力消費の少ない時期に水を溜め、消費量の多い夏や冬に発電を行う大きい電力の発電に向いた方法です。
水力発電の種類‐2つのダムを利用した方法
水力発電の方法には、もうひとつ、上部と下部にひとつずつダムを設置するという方法もあります。「揚水式」です。電力消費の少ない時間に、ほかの電力を利用して下から上へ水を戻し、電力消費の多い時間に上のダムから水を流して発電を行います。そのため、繰り返し一定の発電を行うことができるというのが可能です。
水力発電におけるメリットとデメリットとは
日本に向いている水力発電
まず、水力発電のメリットのひとつが、日本の環境に適しているという点です。日本は山が多く、すでに自然に落差ができあがっています。そのため、落差が必要な水力発電には向いているという訳です。2010年代は、火力発電が主流となっていますが、まだ電力供給が十分であった時代では、水力発電の方が主流であり、そのためにダムの開発も積極的に行われていました。
環境の面から見た水力発電のメリット
設備の建設という点を除いて、水力発電では温室効果ガスが生まれないため、クリーンなエネルギーだといえます。さらに、コスト的にもほかの発電方法と比べると安価です。さらに、水は、川が流れる限り安定的に供給が可能なエネルギーでもあります。水力発電は、再生可能でクリーンなエネルギーでもあるのです。
時期によっては発電量が限られることがある
それでは、水力発電のデメリットとは何か。まずひとつは、時期などによって、雨が降らない日が長く続くと安定した発電ができなくなるということです。特に規模の小さい発電方法は影響を受けやすいといえます。
生態における影響
水力発電は、地球環境においてはクリーンなエネルギーであるということを解説しました。しかし、地球環境には良くても、必ずしも生態系に良いとは限りません。ダムで水をせき止めることによって、ダムのある場所は少なからず水没し、ダムの下流は砂が自然に運ばれてこなくなってしまいます。そのため、周辺に生息する動植物に影響が及ぶことも少なくありません。
水力発電の現状と将来について見てみましょう
水力発電の今
水力発電による発電量は1999年と2010年とでは大きな変化はありません。まず理由のひとつとして、設備の設置が複雑だからという点があげられるでしょう。河川や用水路には「水利権」という権利が存在し、水利権を得るためには国だけでなく自治体などからも許可を得なくてはなりません。小水力発電については2013年に簡素化が行われましたが、まだまだ水力発電普及の課題だといえるでしょう。
水力発電と将来
現状において、すでに大規模な工事は済んでおり、今後開発が進むとすれば、小規模なものになると予想されています。それでも、水力発電における地球温暖化に繋がらないクリーンなエネルギーという点は日本だけでなく、世界でも注目されている部分です。すでに、小水力発電の部門においては、国際協力も行われています。
まとめ
水力発電は、日本において主力とはいわないまでも、縁の下の力持ちとして、今日の電力供給において欠かせない存在です。日本においては、今後大規模な開発は難しいというのが現状ですが、小水力発電という分野において、日本だけでなく世界で発展していくことが予想されています。地球温暖化防止の一端になる日も近いのではないでしょうか。