電力自由化でお得な料金プランが打ち出されていても、「新電力が倒産したらどうなるのか?」という不安から、電力会社の切り替えに踏み切れない人もいるのではないでしょうか。契約する電力会社が倒産したらどうなるのか、電力の安定供給を守るための仕組みについてまとめました。
倒産しても電気は送られる仕組みがある?
電力の自由化で心配している人が多いことの一つとして、新電力(PPS)の倒産時の停電が挙げられます。これまでの地域の電気会社から変えたら、万が一倒産した際に電力の供給を受けられないのではという懸念から、電力会社を変えないといった人も少なくありません。
まずは、電気が家庭に届くまでの流れをみていきましょう。
電気は、1つの電力会社が送電線など自らの送電網を保持して、単独で電力を送っているわけではありません。地域の大手電力会社が維持している送電網を使って、電力会社から各家庭に送られてきます。つまり、さまざまな電力会社の電気が送電網で交じり、各家庭に供給され、メーターで使用量が管理されているのです。
つまり、新電力(PPS)会社が万が一倒産した場合にも、電力の安定供給の観点から、他の電力会社がつくった電力が供給されますので、電気が止められてしまう心配はないのです。
電力会社の発電量の調整を行うのは、広域的運営推進機関という組織になります。広域的運営推進機関は送配電設備の管理や電力の需要と供給のバランスをチェックしており、電力が不足する場合には、他の電力会社への発電指示や他の電力系統との調整を行っています。
倒産のとき電気料金はどうなる?
では、契約する新電力が倒産したとき、電気料金はどうなるのでしょうか。
電力会社が倒産した場合、電気料金は「地域の標準的な料金」で計算されます。つまり、ライフスタイルに合わせたお得な料金ガスや携帯電話とのセット割引をこれまで利用していたとしても、そういった電気料金の割引は継続されなくなり、一時的に割高な電気料金を払うことになるのです。
とはいえ、ずっと「地域の標準的な料金」を支払わなければならないわけではありません。新たな電力会社と契約するまでの一時的なものとなり、新たな電力会社と契約を結んだ後は、新しい電気会社の設定する料金が適用されます。また、地域の電力会社と再び契約することも可能です。
基本的には安定供給が図れる会社のみ進出可能
しかし、新電力の倒産が相次いだら、電力の供給に問題は生じないのでしょうか。
実際、電力の小売り完全化とはいっても、すべての企業が無条件に参入できるわけではなく、規制が設けられています。
2016年4月からの電力自由化によって、小売電気事業者は登録制となりました。電力の小売への参入を希望する新電力は、広域的運営推進機関へ加入した後に、経済産業大臣に小売電気事業者の登録申請書を提出します。登録申請書が受理されると、電気の調達計画をもとに、安定供給を図れる業者かどうかの審査が始まります。過去の法令違反の有無など経営態度なども調査の対象です。申請から登録までの期間は1か月ほどですが、登録は拒否されることもあります。
また、小売電気事業者として登録を受けて電力の供給を開始した後は、料金や供給条件について利用者に説明する義務が課され、苦情に対して適切に処理する義務も生じます。経済産業省は、事業運営に対する報告を徴収するとともに、必要に応じて立ち入り検査や業務改善命令を出し、健全な運営状況となるよう管理が行われているのです。
つまり、電力自由化といっても、新電力などの電力会社は経済産業省による規制や管理下にありますので、多くの新電力が相次いで倒産といった事態は考えにくいといえます。
新電力が倒産するリスクはあるの?
とはいえ、個々の新電力が倒産するリスクはゼロとは言い切れない面もあります。経済産業省による審査はあるものの、資金力や電力供給に関するノウハウなどの技術力は、参入する新電力によって異なります。
新電力の経営を圧迫すると想定される要因の一つとして、いわゆる「30分同時同量」が挙げられます。新電力は地域の電力会社の送電網を使って電力を供給しますが、契約者が使った電力量と同量の電力を30分ごとに流す義務があります。しかし、想定外の猛暑日や発電所の急なトラブルなどによって、義務を守れなかったときには、他の電力会社が代わりに電力を供給するため、ペナルティが上乗せされた電気料金を支払うことになります。こうしたことが度重なると、資金繰りが悪化し、倒産につながっていくことも想定されるのです。
また、燃料の調達費用の上昇なども経営の圧迫要因となりますので、資金に余裕のない企業では、立ち行かなくなることもあります。
ひとまずは、2020年に予定されている「発送電分離」まで持ちこたえると、地域の電力会社の優位性が薄れますので、そこまでが勝負とも言えるでしょう。
まとめ
電力自由化によって、契約する新電力が倒産に陥るリスクはあるものの、電力の安定供給を図る仕組みはつくられています。電力会社を見極める目は必要ですが、過度に不安を持たずに、自分のライフスタイルに合った電力会社を選んでいきましょう。